ある日、森の奥で、ひとつの「ヒカリ」がうまれました。
キラキラと黄色く光る、ちいさなヒカリ。
ちいさな黄色いヒカリは、森のなかに咲いている小さな花をみて、
「きれいだなー」
そう思って、好きになりました。
緑の葉っぱの先に溜まっている朝露も、好きになりました。
おひさまの光りを通してゆらゆらしている葉っぱも、好きになりました。
こずえを楽しそうに追いかけっこしているリスも、好きになりました。
岩から滲み出る湧き水も、好きになりました。
ちいさな黄色いヒカリは、まわりに好きなものがたくさんありました。
好きなものに囲まれて、ワクワクニコニコ、いつも楽しくすごしていました。
ちいさなヒカリの名前は、【スキナキモチ】といいました。
しばらくした頃、風とたのしそうに戯れている、好きになった小さな花を見て、
「僕の光でもキラキラたのしそうにしてよ。」
「僕を見てよ。」
と思いました。
葉っぱの先の朝露が、葉っぱの先からピョンとジャンプして、ポチャンと川に楽しそうに飛び込むのを見ても、
「僕とも楽しそうにして。僕を見て。」
おひさまのヒカリでキラキラまぶしそうに笑っている葉っぱを見ても、
「僕とも笑って。僕を見て。」
ふざけあって、おいかけっこしているリスを見ても、
「僕ともふざけて。僕を見て。」
湧き水が、岩のうえの苔の上をスルスルながれて遊んでいるのを見ても、
「僕とも遊んで。僕を見て。」
「こんなにみんなのこと好きなのに。みんなも僕を好きになってよ。」
ちいさな黄色いヒカリは、いつのまにかオレンジから赤く、メラメラ光る赤いヒカリになっていました。
メラメラ光る赤いヒカリは、小さな花を赤く照らして戯れました。
今まで戯れていた風があたらないように、風の邪魔をして戯れました。
朝露も、葉っぱも、おひさまも、リスも、湧き水も、苔も、みんな自分だけのものにしたくて、みんなの邪魔をしました。
ちいさなヒカリの名前は、【コイスルキモチ】に変わっていました。
「みんな、僕を一番にして。」
「こんなにみんなが好きなんだから、みんなも僕を好きになって。」
しばらくすると、邪魔をされたみんなは、メラメラ光る赤いヒカリから、ちょっとはなれて過ごすようになりました。
メラメラ光る赤いヒカリは、ひとりになることが多くなりました。
こんなにみんなが好きなのに。なんで僕を好きになってくれないの。
ある日、ゆらりふらりと、やさしい風が赤いヒカリによりそいました。
風にふかれた赤いヒカリは、もっとメラメラ光りましたが、風がゆらりと語りかけました。
「みんな、キラキラ光る君のことが好きだよ。」
「みんながみんなを好きなんだよ。」
「自分だけ一番じゃなく、みんなそれぞれ一番なんだよ。」
「自分を好きになってくれる相手の気持ちは、自分では決められないよ。」
「自分を好きになってくれるのを、決めるのは相手の気持ちだよ。」
「相手に好きになってもらうためには、相手を好きでいるだけ。
余計なことは、必要ないんだよ。」
メラメラしていた赤いヒカリは、風にゆられて、ユラリフラリと光りだしました。
赤いヒカリはだんだんと、優しく青くゆらゆらと光り始めました。
相手の気持ちを自分で決めようとしていた、自分が恥ずかしくなったのです。
自分が一番でいられるように、まわりの邪魔をしていたことが情けなくなったのです。
それから、ゆらゆら光る青いヒカリは、相手が楽しくいられるために、相手の気持ちを考えるようになりました。
相手が幸せでいられるように、相手を愛おしく思えるようになりました。
ちいさなヒカリの名前は、【アイスルキモチ】になりました。
相手に好きになってもらうためには、相手を好きでいるだけ。
相手を愛おしく思うだけ。
そうして、青いヒカリと森の仲間たちは、いままで以上に仲良くなったそうです。
【アイスルキモチ】で、世界が満たされたからです。
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