【新説】アリとキリギリス

【新説】アリとキリギリス

【新説】アリとキリギリス

ある夏の暑い日の事。

キリギリスが、木陰で涼みながらギターの練習をしていました。

そこに、アリの行列が、荷物を運んで通りかかりました。
みんな、汗びっしょりで一生懸命。

「おーい、アリさ〜ん。こんなに暑い日に、炎天下で何をしてるのさ〜?」

「やあ、キリギリス君。
美味しい食べ物とか家の材料を、たくさん運んでいるのさ。
立派な家をたてて、子どもたちを立派にそだてるためにね。」

キリギリスは、立派に一生懸命に働くアリをみて、のんきに歌ばかり歌っている自分が、ちょっと恥ずかしくなりました。
それでも、時々、路上ライブで、自分の歌を楽しそうに聴いてくれる人たちの顔を思い浮かべると、ちょっと幸せな気持ちになれます。

「アリさん。がんばってね!」と、
キリギリスは元気の出る歌を歌って、仕事に励むアリを応援しました。

アリは、すこし元気がでて、チカラがみなぎりました。
ですが、木陰で歌ってばかりのキリギリスを、内心は見下していました。

あんなに楽してばかりいたら、将来苦労するぞ。
あんな奴みたいにならないように、一生懸命働こう!

そんなふうに考えていました。

その日の夜、一日中働き詰めに働いて、ヘトヘトになっていても、アリは、拡張したアリの巣の住宅ローンの計算や、子どもたちが通う、アリの学校の費用の計算などがあるので、すぐにはゆっくり眠れません。

遅くまでお金の計算をしたアリは、テーブルに座ったまま寝てしまいます。
そんな毎日です。

その頃、キリギリスは、今日歌った路上ライブの曲や写真を、インスタに投稿していました。

すると、そこに一通のメールが届きました。

それは、あなたの路上ライブを聴きましたが、あの曲をぜひネット配信してみませんか?
というお誘いのメールでした。

ちょっと怪しいなあー。
とも思いましたが、自分にはリスクもなく、歌う時間を拘束されるわけでもないので、やってみなきりゃわからない!やってみよー!ということになりました。

今のネット社会はすごいです。
キリギリスの曲はあっという間に広まって、いわゆる著作料が入るようになりました。

最近はやりの、ストックビジネスというやつです。

ストックビジネスとか、サブスクリプションサービスとは、いわゆる労働対価の収入ではなく、著作権や家賃収入のような権利的に得られる収入です。

マイクロソフトのOffice365とか、Amazonプライムとか、AppleミュージックやHuluやNetFlixなんかもそうです。

時間に拘束されることのない収入です。

お金と時間の自由を手にしたキリギリスは、木陰で思う存分ギターの練習ができるようになり、もっとたくさんの人を元気付けることができるようになりました。

キリギリスの奥さんは、フラフラしているキリギリスにいいかげん愛想を尽かしていましたが、ストックビジネスのおがげで、生きる余裕や安心が見えたため、とても優しくなりました。
そしてキリギリスが、家族と仲良く過ごす時間も増えました。

キリギリスは思いました。これが俺の生きたかった人生だ!

一方でアリは、毎日の働き詰めがたたって、炎天下に過労と寝不足で倒れて死んでしまいました。

かけていた保険のおかげで、住宅ローンや教育費はなんとかなり、子供たちも学校には通えています。

アリは死ぬ間際に思いました。これが俺の生きたかった人生なのか?

 

キリギリスは、頑張ってい生きたアリのために、仲間を呼んで盛大なお別れ会を開きました。

自分の羽の音色をYouTubeにアップしているユーチューバーのセミなど、時間とお金が自由になる仲間たちが、どんどん増えているのです。

このように、時代とともに、昔話や常識というのは、諸行無常なのです。

人生には、マニュアルも絶対的な成功法則なんてありません。
どう生きるのもあなたの自由。

あなたの人生。

あなたの生きたかった人生ですか?

 

 

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