「ついに発明しました!」
お城でクスリの研究をしていた医者がおおよろこびして、早速王様に伝えまに来ました。
「これこそ、嘘がなくなるクスリです。」
このクスリを効能は、だれのココロの中からも、「嘘をつく気持ち」がなくなるというのです。
王様はさっそく、牢屋にはいっている、大嘘つきの大泥棒にそのクスリをのませました。
クスリを飲んだ大泥棒は言いました。
「いやー、あれも、これも、ホントは俺が盗んだんだ!」
「実は、牢屋の鍵も、そのうち盗んじまおうって企んでたたところさあ。」
嘘がつけなくなった大泥棒は、どんどん本当のことを話してしまいました。
自分の口から出た言葉に一番驚いたのは、大嘘つきの大泥棒でした。
「これじゃあ、これから泥棒をしても、すぐにばれちまうじゃないか。なんてことをしてくれたんだ!」
それでも、嘘をつくことがなくなった大嘘つきの大泥棒なら、すぐに捕まえることができるだろうと、なんと牢屋からだしてもらえましたもので、ひとまずは喜びました。
「しょうがねえなあ。ちょっとは真面目にはたらくか。なんせ、嘘がつけねーんだから、うっかり悪いこともできんぞ」
そのクスリの効果は、あっというまに国中にひろまりました。
「嘘がなくなるなんて、なんていい薬だ」
「王様がみんなにクスリをくばってくれるそうだよ」
「きっと、明るくて楽しい国になるね」
「みんな、やさしくて仲よしばかりになれるわね」
なかには、いままでついてきた嘘がバレてしまうことをおそれて、地下に潜って生活をはじまたものもありました。
あるいは、クスリを飲んで嘘がバレてもいいように、クスリを飲む前に嘘を上手にバラすものもおりました。
そうしているうちに、国民は順番にお城に呼ばれました。
「嘘がなくなるクスリ」を、城のみんなが見ている前で飲まされました。
自分だけ飲まないで、うまいことやってやろう。
と、考えるものもいたからです。
すぐに、嘘のない国ができあがりました。
よく効くクスリでしたので、まったく嘘がなくなりました。
「実はあのとき、ツボをわってしまったのは僕なんだ。ほんとうにすまない」
「ドーナツをつまみ食いしたのは僕だよ。ごめんなさい」
いつ、自分の嘘がばれてしまうのかハラハラした国民は、みんな自分から嘘をばらして、謝罪をはじめたのです。
自分も嘘をついているんだし。
謝ってるし。
みんなお互いさま。
と、すべての嘘を認め合い、ゆるしあいました。
嘘は、自分のための悪巧みや、見栄や虚栄、言い訳のためについてしまいます。
見栄や虚栄や悪巧みや言い訳のない、あかるい、楽しい、仲よしばかりの国になる。
そんなふうに、みんな喜んでいました。
風のうわさは、遠く離れた国でクスリを研究している医者の耳にもとどきました。
その医者も、かつて「嘘のなくなるクスリ」を作ったことがあったのです。
「これはいかん」
その医者は、なにかのクスリをもって、遠く離れた「嘘のない国」に向かいました。
そのころ、嘘のない国では、みんな嘘をつかずに、正直にすごしていました。
「おや、このスープは塩からくて飲めないな。からだにわるそうだ」
「そういえば、あの人が君のことを、乱暴者っていっていたよ」
「うちのカミさんは寝相がわるくてね。それに、いびきもすごいんだ」
国民のあいだでは、なんだかギスギスした気持ちがつもりはじめていました。
「まずくてわるかったわね。じゃあ、からだにいいもの自分でつくりなさい」
「どこが乱暴なのか、直接ききたいもんだ。お前もそうおもってるのか」
「あんたが暑苦しくてねられないのよ。もっと離れてねてちょうだい」
ギスギスがギスギスを呼んで、ギスギスギスギス。
クスリをのまずに地下に隠れていた男も、これは面白いことになったと、出てきて自分勝手な嘘をつくものだから、国の中はおおさわぎ。
「彼女がこんなこと言ってたよ」
「あいつは、本当はこんなことやってるんだよ」
「わるいことなんて、みんなやってるんだよ」
見栄や虚栄、悪巧みもばらまいて、仲のよかった国は、こころがバラバラになりました。
国の中で争いごとが絶えなくなってきたころ、城では、王様も、クスリを発明した医者も、あたまを抱えて困っていました。
「だいたい、おまえが勝手な研究ばかりして、こんなクスリを作るからいかんのだ」
「最初は王様も喜んで、王様がみんなに飲ませたたのに、勝手なことをいわんでください」
そのころ、遠くの国を出発したあの医者が、ようやくお城を訪ねてきました。
「じつは、かつて、わたしも同じクスリを発明して、国を大変なことにしてしまった医者です」
「うわさをききつけ、このクスリを持参しました」
争いの絶えない国をすくうために、頭をひねって新しいクスリを研究し、ようやく発明したクスリだそうです。
そして、持参したそのクスリを王様に手渡しました。
「これがそのクスリ、嘘がつけるようになるクスリです」
王様と医者は、「嘘がなくなる楽しい国」なんて、作ることは出来ないいんだ。
元に戻ったほうがまだよいと、「嘘がつけるようになるクスリ」をうけとりました。
遠くの国から来た医者は、がっかりしている王様と医者にニコリとわらって続けました。
「ただし、1種類の嘘しかつけません。」
「クスリの名前は、” White Lie ” です」
薬名:
White Lie(ホワイト ライ) 白い嘘効能:
気づかい、やさしさ、思いやりといった、「相手のための嘘」だけが、つけるようになります。使用方法:
見栄や虚栄、自分のための嘘がつけない状態でご使用いただくと、相手のための罪のないやさしい嘘がつけます。
そして、国は、相手のための優しい白い嘘でみたされた、思いやりのある国になりました。
めでたし めでたし
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