むかしむかし、くらい宇宙には、「太陽」 と「 地球」 と「 月」がありました。
地球が見あげる空は、いつも太陽と月の出ている明るい空でした。
地球も月も太陽も、その明るい空で一緒に楽しく過ごしていました。
月が見上げる空は、星がキラキラ輝く綺麗な夜空でした。
その夜空に、煌々と光る太陽と、碧い地球がならんで浮かんで見えていました。
空気の少ない月には、明るい空はなく、いつも夜空がみえていたのです。
同じ景色も、見かたによって違って見えるのです。
太陽が見上げる空は、月と地球が遠くに見える夜空でした。
夜空にキラキラと輝くふたつの星に見えていました。
太陽の光を反射しているので、ちいさくてもまん丸で、仲良く光って見えていました。
地球はいつも思っていました。
明るく広い空を、白く輝きながら自由に浮かんでいる月が、とても楽しそうだなあと。
月はいつも思っていました。
夜空に碧々と輝きながら、キラキラの星々や太陽にかこまれている地球が、とても楽しそうだなあと。
太陽からは、地球も月も、きれいな夜空にキラキラと輝いて、とても楽しそうに見えていました。
地球は月に言いました。
「いつも、ふわふわ、楽しそうだね」
月は地球に言いました。
「いつも、星に囲まれて、楽しそうだね」
太陽は月と地球に言いました
「いつも、キラキラしてて、楽しそうだね」
そう言いながら、みんなで楽しく過ごしていました。
そうして長い間みんなで楽しく過ごしていくうちに、月はふと考えました。
たくさんの星々に、キラキラと話しかけられて、ニコニコしている地球。
太陽とならんで楽しそうにしている夜空の地球。
それをみて、月は地球がうらやましくなりました。
地球が見ている空は、明るくてみんなが楽しそうにしていました。
だから地球もニコニコしていました。
ですが、月が見ているその空は、いつも暗い夜空でした。
夜空も綺麗ではありますが、いつも静寂の宇宙の中にある夜空だったのです。
静かな暗い宇宙で、1人ぼっち。
キラキラのたくさんの星々や、輝く太陽と楽しそうにしている地球を、僕はひとりぼっちでながめている。
そんなふうに思ってしまいました。
地球から見える月は、明るい空で太陽と楽しそうにしている。
そんなふうに見えているのに。
太陽から見える月は、夜空で地球やキラキラ星にかこまれて楽しそうにしている。
そんなふうに見えているのに。
見ている空はおなじなのに。
同じ場所にいるのに。
月は違う景色を見てしまったのです。
「僕はまっくらな宇宙の中でひとりなのに、地球はみんなにキラキラかこまれて楽しそうだ」
そう思ってしまいまいた。
月は、「自分も楽しそうに見られたい」と強く思うようになりすぎて、自分がどう見られているのかが、見えなくなってしまっていたのです。
そう思った月は、地球にイジワルがしたくなりました。
地球に気づかれないように、月は星々にそっと言いました。
「君たちが地球から見えなくなるように、ちょっといたずらするけど、気にしないでね。」
「おもしろいから。」
星は、そんなことをして大丈夫なのかと聞きましたが、月は「大丈夫、大丈夫」と笑って言いました。
そうして星々の前に動いて、星々を隠してしまいました。
星々は、大丈夫かなぁと、不安そうにその様子をそっと見ていました。
地球は、いつもの明るい空を見上げると、月がいつもと違う場所に浮かんでいる事に気付きました。
でも、明るい空ですので、うすく光る星々がかくされていることには気づきませんでした。
「また、ふわふわと楽しそうにしているな〜」
と、そんな風に思い、月をいつも見上げている場所にもどすために、ちょっとだけ顔を曲げました。
月は、ちょっとだけ顔を曲げた地球が、気にもせずにあいかわらずキラキラと楽しそうにしているのを見て、おもしろくありませんでした。
また同じように、次々と星々を隠しました。
地球は、またちょっとだけ顔を曲げ、いつものように楽しくて明るい空を見上げていました。
そのうちに、月が星々に「いたずらするけどだまっていねて」と話しているという噂が、地球にも聞こえるようになりました。
月から言われた星々や、その様子をみていただけの星々さえも「おかしいな」と気づき始め、地球におしゃべりしたからです。
地球はちょっとだけ嫌な気持ちになりましたが、気がつかないふりをして、月がいつもの場所にみえるようにと、顔を曲げ続けました。
いつもの楽しくて明るい空を見上げていたいからです。
太陽と月がでている明るい空で、楽しく過ごしたいからです。
そんなことを繰り返し、気付くと月のいる位置は、始めの頃よりもずいぶんと太陽に近くなっていました。
いたずらをしても、なんともなさそうに見える地球に、月はもっといたずらをしてやろうと考え、ついに太陽を隠すことにしました。
太陽を隠してしまえば、楽しそうな地球を困らせられる。
自分よりも楽しそうな地球に勝つことができる。
そんなふうに考えたのです。
太陽は大きくて明るいので、月ではなかなか隠せません。
月がちょっと太陽にかかりました。
ちょっと暗くなった空を見上げ地球は、いたずらをしている月に気づかないふりをして、
「明るい空がたのしいなあ」と
大きな声でいいました。
でも、月にとっての空は暗黒の宇宙。
「明るい空」とはなんのことだかわからなかったようです。
どんどん月は太陽を隠し、ついには太陽に覆いかぶさってしまいました。
これが、月が闇の象徴になった「皆既日食」のはじまりです。
暗くなった空を見上げた地球は、何度か「明るい空がたのしいなあ」と、大きな声で言いましたが、月は太陽に被さったままで、なぜか太陽も出てくる気配もないので、しょうがないとあきらめました。
太陽も月と一緒にイジワルをしているのかもしれない。
地球はそんな気になってしまいました。
いままでの小さなイジワルが積み重なって、「いいかげんにしろ!」と叫びました。
そして、しょうがないので、他の楽しくて明るい場所を探すことにして、どんどん顔をまげました。
時々、もとに戻ってるかなと横目で振り返ったりしましたが、ついには月と太陽から目をそらし、後ろをむいてしまいました。
その後に、地球が後ろをむいているところで、知らないうちにキラキランの星々が集まって、星座がいくつも生まれました。
星座が生まれると共に、それにあわせるように、月も太陽を隠すのをやめて、地球の周りを回るようになりました。
こうして、「夜」と「昼」がうまれました。
「地球の自転」と「月の公転」のはじまりです。
そこから生まれたのが「明と暗」「陰と陽」「善と悪」「悲しみと喜び」といった、両面を持つ両極端。
このように、両極端のバランスは、ほんのすこしの見かたの違いで、簡単にころがりはじめたのです。
いろいろな見え方がある世界。
自分の目で見ているだけでは、偏った世界がみえるのです。
本当の世界は、自分の目だけでは見ることができないのです。
星座がどうして生まれたか?
それは、地球が’後ろを向いてから地球の知らないところで起こった、太陽を守る神様と星々、太陽と月のおはなし
「星座が生まれたわけ」に続きます。
しばしお待ちを。
余談
月は地球が気になるため、いつも地球の方を向きながら地球の周りを回るようになりました。
なので、地球から見上げる月は、いつも裏の顔を見せずに同じ面だけが見えているのです。
いつまでも地球を見ているだけでは、自分がどう見られているのか気づかないままなのに。
すこし見かたをかえてみると、ほんのちょっとのバランスで、良い方向にころがるのに。
太陽は、遠く離れたふたつの星にも、そんな影響をあたえる自分の光に気づきました。
また、遠くからも他のたくさんの星に見られている事にも気づき、とまどいました。
いまは、いつまでも美しく輝き続け、まわりに光を与えるることだけを考えるようになりました。
そして、永遠に明るく燃え続けようと、太陽系の星々をずっと照らすようになったのです。
コメントを書く