天才肌と努力家のおはなし

天才肌と努力家のおはなし

あるところに、天才ばかりがあつまる国がありました。

王様も天才、靴屋も天才、野菜売りも、時計屋も、みんな大変な天才だったので、それはもう天才的な才能のあふれる国でした。

そこから、ちょっと離れたところに、とても努力家があつまる国がありました。

王様も、お姫様も、薬屋も、パン屋も、時計屋も、みんな大変な努力家だったので、それはもう大変な努力の成果が出ている国でした。

天才の国の天才たちは、それはそれは天才なので、いろいろと新しいことを思いついたり、突拍子もない工夫をしたり、すごい発明をしたりしていました。

ところが、天才は、すぐに新しいことをひらめいて、今までやってきたことをほっぽらかしてしまうことがよくありました。

天才の時計屋は、ゼンマイと歯車で動く時計を、カチカチいわずにスーッと動く方法を思いつきました。

しかし、その時計を作っているときに、ゼンマイじゃなく最近はやりの電気で動く時計の作り方を思いつき、スーッと動きかけた時計をほっぽらかして、新しい時計の研究をはじめてしまう始末です。

なので、天才の国には、作りかけのいいアイデアが、ごろごろゴロゴロほっぽらかされていました。

努力の国のひとたちは、それはそれは努力家でした。
言われたことも、言われてないことも、こつこつコツコツ文句も言わず、ときにはご飯を食べることや、寝ることさえもわすれて、こつこつコツコツ没頭して、なんでもすばらしい成果を成し遂げていました。

しかし、つみあげてきた自分の技術や経験で、こつこつコツコツ作業をすることは大変得意なかわりに、ちょっと目先をかえて突拍子も無いことをすることは苦手でした。

突拍子もないことをして、いままで築いてきた努力がガラガラと崩れてしまうのがこわいので、こつこつコツコツ地道に経験や技術をすこしずつ積み上げて、すこしずつ幸せに暮らしていました。

まわりの国では、努力の国の時計は、時間が狂うこともなく故障も少なくて間違いない。だけど、持っていても面白みがないなあ。

その反面、天才の国の時計は、あららこんな事まで!
って思うくらいの、びっくりするような機能があったり、持っていて面白いんだが、すぐに故障したり、ときには半日くらいずれていたりする。
だから、持っていても使い物にならんなあ。

そんな評判がたっていました。

ある日のこと、文字盤にするための綺麗な石をさがしに、山に行った努力家の時計屋は、石切場でブラブラと石をさがしている天才肌の時計屋に出会いました。

ふたりは、お互いの様子をみて、お互いに時計屋だな、と思いました。

「やあやあ、文字盤の石探しですか。」

どちらからともなく、そんな時計づくりの話でもりあがりました。

努力家は努力して作る時計の話を、天才肌は思いいた突拍子もないアイデアの話などをして、なかよくすごしました。

しかし、努力家の時計屋は天才肌のことを、思いつきだけで努力もしない怠け者。
と、心の中でおもっていました。

天才肌は、こつこつ働くのもいいが、こいつも時計と同じで面白みがないんだろうな。
と、思っていました。

天才肌が、カチカチいわずにすーっと動く針の時計の作り方の話をしたとき、
「ああ、それなら一晩寝ないで作ればできますよ。」
と努力家がいいました。

天才肌は、寝ないで働く気なのか?
いつねるんだ?
と突拍子もないことを思いましたが、口にはしませんでした。
自分ができないことを努力家ができることに、驚いている様子はみせたくなかったからです。

自分も努力はしているが、そんな無駄な努力はしない、とも思いました。
努力家がしている努力は、自分のしている努力とは違うもの、と考えていたからです。

天才肌の時計屋が、電気で動く仕組みも考えているとしった努力家の時計屋は、電気で動かすなんて突拍子も無いことを考えるもんだ。
電気をつくるのにどれだけ大きな機械が必要なのかもしらんのか。
とバカにしましたが口にはしませんでした。
そんなアイデアを思いつけないと思われるのが悔しかったからです。

でも、ちょっと努力すれば、小さい機械で電気をおこせるかもしれない。
そんな夢の時計も作ってみたいな、とも思いました。

天才肌も、この努力家なら、自分のアイデアをすばらしい成果として作り上げてくれるのではないかと思いました。

そして、お互いの気持をくみとった二人の時計屋は、協力をすることにしました。
その日のうちに努力家は、ごろごろゴロゴロ転がっている、作りかけの天才肌の時計を持ち帰って、ほんとに一晩寝ないでつくりあげてしまいました。

天才肌は、とてもすごいと思い、自分にはできないことにちょっとうらやましくも思いました。
なので、すごいと思っていると思われないように、自分のアイデアのおかげさ、と思うようにしました。

努力家は、そんな天才肌に、まったく天才ってやつは自分勝手なもんだ、やってられんよ。
とも思いましたが、自分にはでてこないアイデアをうらやましくも思いました。

それから、ふたりの時計屋は、頻繁におたがいの時計屋に足を運ぶようになり、つぎつぎと、突拍子もなく面白くて、時間も遅れない、故障もあまりしない時計をいくつも作りました。

王様たちもその話をきいて、国をひとつの国にして、協力することにしました。

国の名前は「舎短取長」。

そして、いつまでもお互いを受け入れて協力し、たいそう繁栄したそうです。

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